「ながら運転」は法令上の用語ではなく通称で、道路交通法や警察庁の資料では「携帯電話使用等」と呼ばれます。通称のままだと、手に持つ行為だけを指すのか、カーナビも入るのか、信号待ちはどうなのかが人によって食い違い、社用車を使う会社ではそれがそのままルールの穴になります。条文が何を禁じ、どこからが対象で、事故がどれだけ起きているのかを、警察庁と交通安全白書の公表資料で整理します。
ながら運転とは。条文が禁じている2つの行為
根拠は道路交通法第71条第5号の5です。警察庁が掲載している条文は次のとおりです。
自動車、原動機付自転車又は自転車(以下この号において「自動車等」という。)を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置(その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る。)を通話(傷病者の救護又は公共の安全の維持のため当該自動車等の走行中に緊急やむを得ずに行うものを除く。)のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置〔保安基準上の装置を除く旨の括弧書きは略〕に表示された画像を注視しないこと。
禁じられているのは「通話のための使用」と「画像の注視」の2つで、別々の行為として書かれています。対象は自動車だけでなく原動機付自転車と自転車も含み、「当該自動車等が停止しているときを除き」とあるので走行中が対象です。
つまり「ながら運転」はスマートフォンを手に持つ行為に限りません。取り付けた、または持ち込んだ画像表示用装置の画像を注視する行為も同じ号が禁じているため、カーナビやタブレットの注視も対象です。除かれているのは、救護や公共の安全の維持のため走行中に緊急やむを得ず行う通話と、条文が名指しする道路運送車両法上の装置の画面だけです。
自転車については、令和6年11月1日から携帯電話使用禁止等に関する改正道路交通法が施行され、運転しながら手で保持して通話する行為と画面を注視する行為の罰則が強化されました。
違反になる行為の分類。保持・注視・停止中の境界
条文の文言に沿って、よくある場面を分類すると次のようになります。
| 場面 | 条文上の位置づけ |
|---|---|
| 走行中、手に持って通話する | 「通話のために使用」に該当 |
| 走行中、手に持った画面を注視する | 「画像を注視」に該当 |
| 走行中、ホルダーに固定したスマートフォンやカーナビの画面を注視する | 「取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置」の注視に該当。手で保持していなくても注視は対象 |
| 車両が完全に停止しているときに操作する | 「停止しているときを除き」に当たり、この号の対象外 |
| 救護や公共の安全の維持のため、走行中に緊急やむを得ず通話する | 通話の定義から除かれている |
| 自動運行装置を適切に使用している自動運転車 | 交通の方法に関する教則が除外を明記 |
手で保持しない通話については、条文の括弧書きが対象を「その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができない」装置に限っています。ハンズフリー機器を使った通話はこの通話の定義から外れますが、画面の注視は別の行為として残ります。社内でどこまで許すかは、条文の線引きとは別に会社が決める話です。
注視が何秒からかについて、条文に秒数の定めはありません。警察庁は「運転者が画像を見ることにより危険を感じる時間は運転環境により異なる」としたうえで、各種の研究報告によれば2秒以上見ると運転者が危険を感じるという点では一致している、と説明しています。
警察庁の罰則の整理は2区分です。「携帯電話使用等(保持)」は、無線通話装置を通話のために使用した、または手で保持した画像表示用装置の画像を注視した場合を指します。「携帯電話使用等(交通の危険)」は、第71条第5号の5に違反し、それによって道路における交通の危険を生じさせた場合を指すため、保持していたかどうかは要件になりません。罰則・反則金・違反点数の具体的な数字は、別の記事で条文ごとに整理しています(ながらスマホの罰則。違反点数・反則金・拘禁刑を条文と警察庁資料で確認する)。
数字で見る、ながら運転の現在地
警察庁によると、令和7年中の携帯電話等使用による死亡・重傷事故は148件でした。以下の件数と比率は、いずれも第1当事者が一般原動機付自転車以上の車両である事故を集計したもので、自転車の事故は別に集計されています。罰則を引き上げた改正道路交通法が令和元年12月に施行され、広報啓発や取締りの推進もあって令和2年は大幅に減少しましたが、令和3年以降は増加傾向にあります。
危険性の大きさは、次の3つの数字に表れています。
- 携帯電話等使用時の死亡事故率は、使用していない場合の約3.4倍。死亡事故率とは交通事故件数に占める死亡事故件数の割合で、警察庁は令和3年から7年の合計で比較しています
- 同じ令和3年から7年の合計で、携帯電話等使用による死亡・重傷事故の人的要因は前方不注意が91.8%。使用していない場合の26.9%に対して約3.4倍
- 時速60キロで走行した場合、2秒間で約33.3メートル進む
取締りの規模も公表されています。令和7年中の取締り全体約403万件のうち、運転中の携帯電話使用等は年間約18万件で、全体の約4.5%に当たります。
視野を広げると、ながら運転のうち画面の注視は、統計上「脇見運転」や「漫然運転」として集計される大きな塊とつながっています。令和8年版交通安全白書によると、令和7年の交通死亡事故2,495件を法令違反別にみると安全運転義務違反が1,328件(53.2%)と約半数を占め、その内訳では漫然運転366件(14.7%)、運転操作不適330件(13.2%)、脇見運転252件(10.1%)、安全不確認244件(9.8%)が並びます。第1当事者別では自家用が1,664件(66.7%)、事業用が252件(10.1%)です。この集計は自家用・事業用の区分であって業務利用かどうかの区分ではありませんが、死亡事故の大半が自家用の車両によって起きていることは読み取れます。
なお自転車については、携帯電話等使用による死亡・重傷事故は近年増加傾向にありましたが、令和7年は3年ぶりに減少しました。
導入で決めること

条文は「何をしてはいけないか」を決めていますが、現場で守れる形にするには会社側で決める項目があります。最初に固めたいのは次の5点です。
- 対象の線引き。手に持った通話と画面注視は条文が禁じています。そのうえで、ホルダー固定の画面操作、カーナビの目的地変更、ハンズフリー通話を社内でどこまで許すかを明文化します
- 停車の扱い。条文上は停止中が対象外でも、どこに停めるかは別問題です。警察庁は「どうしても使用しなければいけないときは、必ず安全な場所に停車してから使用してください」としています。安全な停車場所の基準を運転者任せにしないこと
- 連絡する側のルール。走行中の着信が発生しなければ、手に取る理由も減ります。管理者や内勤から運転者へ電話をかけるタイミングを決めます
- 指導の材料。安全運転管理者を置く事業所では、運転者への指導が法定業務に入ります(安全運転管理者とは。選任の基準・9つの業務・罰則を条文で確認する)。口頭注意ではなく、走行実態のデータを根拠にするかどうかを決めます
- 端末側で止めるかどうか。走行中の操作は点呼では確認できず、自己申告にも限界があります。意識づけだけで抑えにくい項目をどう扱うかは、ルールとは別に決めます
業種別の勘所
- 営業・訪問中心の事業所。顧客からの着信に即時応答を求められる職場では、「出ない」だけでは回りません。折り返しの体制と、停車してかけ直すまでの許容時間を決めておきます
- 配送・軽貨物。配車や再配達の連絡が走行中に入ります。連絡手段を音声通話から、停車時にまとめて確認できる形へ寄せられるかを検討します
- 訪問介護・訪問看護。緊急連絡と通常連絡が同じ経路で届きます。条文が例外とするのは救護や公共の安全の維持のための緊急やむを得ない通話なので、その線引きを事前に決めておきます
- 建設・設備保守。拠点や現場をまたぐ移動が多く、ルールを拠点ごとにばらつかせない仕組みが要ります
- 二輪・原付を使う配達。第71条第5号の5は原動機付自転車も対象です。四輪と同じ基準で扱う必要があります
monap での実例
ながら運転は運転者による通話と画面の注視です。どちらも運転席の中で完結するため管理者からは見えず、事故が起きてから分かることになりがちです。
monap は、業務用スマートフォンにインストールするだけで運転を自動検知し、一定速度を超えると画面を自動ロックする法人向けアプリです。乗車時のアプリ起動は不要なので、「今日は起動し忘れた」という状態になりません。第71条第5号の5が禁じる手に持った通話と画像の注視を、意識づけではなく端末側の仕組みで止めます。
ロック中に着信があると、相手が携帯電話であれば移動中であることをショートメッセージで自動返信します。「出ないと相手を待たせる」という理由で手に取る必要がなくなるため、前節の「連絡する側のルール」を運用だけでカバーしきれない場面を補えます。停車中や設定した速度に達していないときは通常どおり操作できます。アプリが担保するのはロックが働いている間に画面を操作させないことで、停めた場所が安全かどうかの判断と、管理者が許可する例外の扱いは会社側に残ります(例外設定はながらスマホの罰則の記事を参照)。
ロック開始速度や例外の許可はクラウドの設定で一括変更でき、拠点が分散していてもルールを揃えられます。ロック中に画面を触ろうとした回数は端末ごとに記録されるので、指導を「注意した」で終わらせずに済みます。専用の車載端末は不要で初期費用もかからないため、まず自社の端末で試していただけます。
